期限の利益って何?喪失するとどうなるのか!?
カードローンなどの金銭消費貸借契約には期限の利益についての条項が必ず盛り込まれています。
期限の利益とは?
債務の返済期限の猶予と分割での返済が、債権者(貸付側)との契約で取り決めた期日まで認められる債務者(借り入れ側)の権利。
債権者(貸付側)は期限の利益を認める代わりに、債務者(借り入れ側)から金利を徴収することが出来る。
簡単に説明すると期限の利益というのは、貸付側が認める期日まで借り入れ側は返済をしなくても済む権利といえるでしょう。
つまり、約定返済日まで返済を待ってもらえるのは、期限の利益が借り入れ側にあり、その権利を貸付側は契約に反しない限り認めているからです。
期限の利益は、金銭消費貸借契約について回る、法的な効力を持つ内容です。
期限の利益喪失に関しては、民法第137条で定められています。
カードローン契約において理解が必須な事柄なのですが、規約をつぶさに読む人は多くないでしょうから、期限の利益について知らずに契約していることも少なくないと思います。
しかし、健全に借り入れ・返済をしているのであれば、知らなくとも関係がないものでもあります。
ただし、この期限の利益を知らずに喪失してしまう場合が少なからずあることも事実です。
特に、今までにカードローンなどで、理由も分からず利用停止にされた経験がある方は、一時的に期限の利益を失っている経験をしているといえます。
期限の利益が、借り入れ側の残高への返済猶予を認めるものであるという事は、それを失う事すなわち、最終的に残高の一括請求をされることを意味します。
つまり、金銭消費貸借契約の際の、期限の利益に関する条項を把握していないと、知らずに貸付側の規約に背いて一括請求をされる恐れもあるという事です。
端的に、期限の利益の喪失が起こる理由を説明すると、一番は与信状態の悪化です。
金融機関によって、多少の違いはありますが、大体の期限の利益を喪失させる原因は、大まかに以下のようなことが挙げられます。
期限の利益の喪失原因とは?
- 債務者の所在変更が債権者に告知されなかった。
- 返済が滞っている(遅延・延滞)
- 税金の滞納処分などによる差し押さえが行われた。
- 破産手続きや再生手続きの申し立てがあった。
- 他の債務で債務者に強制執行がなされた。
など
これらが一般的に、期限の利益の喪失に関わる大きな原因といえます。
期限の利益を権利として借入側が失った時点で、貸し付け側は初めの契約内容にかかわらず、残高の返済をすぐに求めることが可能となります。
ちなみに、貸付側の金融機関に借り入れ停止の理由を尋ねたところで、教えてくれることはありません。
その為、自身の借り入れ状況や個人情報の更新状態などから、期限の利益喪失の理由を探るしかありません。
借り入れ状況に関しては、借り入れ・返済を常用している方の場合、状態が流動的ですから把握しづらい事もあるでしょう。
その様な時には、信用情報機関であるCIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターに自分の信用情報の開示を請求することが可能なので、利用してみるのがオススメです。
信用情報には、カードローンでの借り入れ履歴だけでなく、クレジットカードや携帯割賦払いの支払い状況なども記載されます。
その為、1社からしかカードローンでは借り入れをしていないのに、利用停止にされて理由が分からない!という場合は、それらの支払い履歴がネックになっていることも考えられます。
信用情報を開示すればそれらの情報が明らかになります。
消費者金融やクレジットカード、携帯割賦の履歴を知りたい場合はJICC並びにCICに開示請求をしてください。
銀行カードローンやフリーローンの履歴を確認する場合は全国銀行個人信用情報センターに開示請求をしましょう。
また、一番シビアに見られるのが、消費者金融が契約先である場合の借入残高です。
というのも、貸金業者は総量規制により、年収の3分の1以上の貸付はしてはならないと法律で定められているからです。
加えて、同じく総量規制のため、他社借り入れ残高と併せたとき、借入額が100円以上となった場合に、収入証明書の提出を借り入れ側に求める必要があるからです。
そこで、契約時は他社借り入れがあるものの、残高が100万円以下であった為に収入証明書が提出されていなかった場合、一時的に期限の利益喪失として利用が停止されたりします。
その為、特に消費者金融などの貸金業者から複数借り入れている方は、残高の推移に注意が必要といえます。
返済が遅れたり、総借入残高が総量規制を超える金額になってしまった場合は、ちゃんと返済をする事で期限の利益を完全に喪失してしまう事を防げます。
基本的に期限の利益を喪失した場合、契約先の金融機関からその旨を知らせる通知が届き、指定の期限までに返済をするように記されています。
その期限までに支払うべき金額を収めることが出来れば、残高の一括請求や強制解約は回避できるでしょう。
遅延損害金と期限の利益喪失の関係
一番わかりやすい期限の利益喪失の例は、やはりカードローンの場合、返済の滞納といえるでしょう。
返済が遅れると、カードローンでは返済が遅れた分だけ、遅延利率で利息が余計にかかります。
その際、遅延損害金の金額を求める際にも期限の利益は関わってきます。
遅延損害金の金額は以下のような式で求めることが可能です。
借り入れ残高×遅延利率÷365日×期限の利益喪失翌日からの日数=遅延損害金額
つまり、期限の利益を喪失をした翌日には、既に借り入れ側は契約・規約違反をしたペナルティを受けることになります。
また、返済を滞納した日数=期限の利益喪失翌日からの日数によって、通常の返済額に増して支払う金額が変わる事も分かります。
ただし、遅延損害金はあくまで返済が滞ったことで発生するので、先述した期限の利益喪失の原因となる事柄すべてにおいて課されるわけではありません。
期限の利益の喪失後はすぐに一括請求されるのか?
上記の中でありがちなのは、借り入れ利用者が自身の住所変更を貸付側に登録し直さないことでしょう。
ただし、それだけで完全な期限の利益の喪失となることは事例としてあまりありません。
まずは、カードローンやキャッシングの利用停止と催促という段階から始まることが多いです。
その際、例えば情報変更の旨を伝えることを貸付側に催促されても、改善されないと利用停止から一括返済請求へ対応が変わります。
また、返済遅延に関しての期限の利益の喪失に関しても、一度や二度の返済遅延で一括請求をされることはないといえます。
本来は、度合いに関係なく、借入側が期限の利益の喪失をしたなら、先述したように貸し付け側には請求権があります。
ところが、一々細かい規約違反(期限の利益条項)を取り締まっていては、借り手がいなくなってしまう懸念があるのです。
そのあたりのサジ加減は、法律的には明示されていないので、貸し付け側である金融機関の判断によるわけです。
以上のように、金銭消費貸借契約と期限の利益とその喪失は密接な関係にあります。
契約の際に、規約全てに目を通すか通さないかは任意でも良いでしょうが、最低限、期限の利益について触れている項目は目を通すと良いでしょう。
基本的に、借り入れ側が期限の利益を喪失しても、すぐさま貸付側に一括請求されることはなく、段階を踏んでの督促が行われることが多いです。
ただし、貸付条件として禁止している利用の仕方を、故意に借り入れ側がした場合は、利用停止後すぐに残りの借入残高を一括返済することを求められる可能性はあります。
例えば、おまとめ契約後に追加借り入れや新規契約が禁止されているにも関わらず、該当する行為をした場合などは、一括請求される可能性が高いといえます。
残高の一括返済が出来ない=債務整理?
ちなみに、万が一期限の利益喪失後、一括請求をされた際に完済が出来ない場合は、債務整理を行うしかありません。
ただ、債務整理にも種類がありますから、一括での返済は無理でも、分割でなら返済可能という場合は任意整理や個人再生という手段が取れます。
しかし、分割での返済も厳しいといった場合は、自己破産して残高の返済を破産することで免責してもらうしかありません。
一括請求されても払えない…といって、何も処理をしないで済む話ではないので、迅速に対応をしましょう。
時に、期限の利益喪失は何もカードローンだけに関わるものではありません。
原則、ローン契約のような後払い契約にはついて回ります。
その為、住宅ローンなどでもし期限の利益喪失をした場合は、持ち家を競売にかけたりする必要が出てくるので、無担保・保証人なしのカードローンよりも影響が大きいといえるでしょう。
途上与信を問う事も規約に盛り込まれている
借り入れ契約時だけでなく、カードローン利用中も定期的に信用情報含む返済能力や登録個人情報が貸付側によって照会されます。
利用中の借り入れ側の状態を精査することを途上与信といいますが、途上与信を問う事もカードローン契約規約の中に入っています。
その為、途上与信を勝手にチェックされたくない!という方は、カードローン契約が出来ないことになりますから、拒否は出来ません。
途上与信はいつチェックされるか?といえば、その頻度も周期も金融機関によってまちまちですし、公表されていないのでわかりません。
さながら、抜き打ちテストのようなものだと思ってください。
ただ、限度額の増額申し込みをした時は、確実に途上与信が審査されるといえます。
増額の際は、契約時同様にカードローン審査で信用情報や属性、登録情報の正確さが精査されます。
その為、限度額増額審査で期限の利益喪失の原因になるような点が見つかれば、増額どころか利用停止になることもあるので、注意が必要です。